時計のバンド交換

服を選ぶとき、シャツやジャケット、パンツ、靴の組み合わせを考えるのは楽しいものです。今日は少しきちんとした格好にしようとか、逆にカジュアルにまとめようとか、その日の予定や気分によって着るものは変わります。
そして私は、服が決まると最後にどの時計を合わせるかを考えます。
時計は時間を確認するための道具ですが、それだけではありません。文字盤のデザインやケースの形、バンドの色・デザインによって、身につけたときの印象がかなり変わります。時計も靴やベルトと同じように、その日のファッションを決める大切な要素のひとつだと思っています。
もっとも、服に合わせて時計を選ぼうとすると、当然ながら一本だけでは足りません。
ジャケットに合わせる時計と、カジュアルな服に合わせる時計では、求める雰囲気が違います。ジャケットスタイルには少しクラシカルで落ち着いたものが合うし、アウトドア系やデニムには、少しハードな印象の時計がよく合います。
さらに、時計本体のデザインだけでなく、バンドの色・デザインも楽しめます。
基本的には、パンツのベルト、靴、時計の革バンドの色をそろえるのは必修。黒い靴と黒いベルトを使うなら、時計のバンドも黒。茶色の靴なら時計も茶色です。
そう考えると、黒と茶色の時計、あるいは黒と茶色のバンドは最低限必要になります。私の場合はネイビーやグリーン、赤系の靴を履くこともあるので、それぞれの色に合わせた時計のバンドも欲しくなります。
クラシカルな時計とカジュアルな時計。黒、茶、ネイビー、グリーン、赤のバンド。
こうして考えていくと、必要な時計やバンドの数はどんどん増えていきます。
だから私は、いわゆる高級ブランドの時計を何本もそろえるという考え方はしていません。もちろん、高級時計には高級時計ならではの魅力があります。デザインや仕上げ、ブランドの歴史、機械としての完成度など、素晴らしいものがたくさんあります。
ただ、私が時計に求めているのは、一本の高級時計を毎日身につけることではなく、その日の服装に合った時計を選ぶ楽しさです。
そのためには、一本に大きな金額をかけるよりも、デザインや用途の違う時計を何本か持っているほうが楽しいのです。
そこでおすすめしたいのが、SEIKOの逆輸入モデルです。
逆輸入モデルというのは、もともと海外市場向けに販売されているモデルを日本に輸入して販売しているものです。オーセンティックなデザインも多く、ネットで探してみると、驚くほどたくさんの種類が見つかります。
SEIKOらしいクラシカルなデザインのものから、スポーティーなクロノグラフ、少しハードな印象のモデルまで、選択肢がとにかく豊富です。
しかも価格は、安いものであれば一万五千円程度から、高くても三万円前後で購入できるものがたくさんあります。その価格でSEIKOのムーブメントを搭載した時計が選べるのですから、ファッションに合わせて何本か持ちたい人には、とてもありがたい存在です。
街の時計店を見て回るのも楽しいのですが、実際には逆輸入モデルをそれほど多くそろえている店はありません。また、時計のバンドについても、店頭に並んでいる色や素材はどうしても限られています。
そのため、私は時計もバンドも、もっぱらネットで購入しています。
ネットのほうが店頭より少し安く買えることもありますが、それ以上に魅力なのは、種類の多さです。時計本体はもちろん、革バンドの色、幅、表面の仕上げ、ステッチの有無まで、さまざまなものから選ぶことができます。
ただし、ネットでバンドを買うためには、ひとつ大きな条件があります。
時計のバンドを、自分で交換しなければならないということです。
最初は、これがなかなか難しい。
時計のケースとバンドをつないでいる小さな金具を外し、新しいバンドに付け替えるのですが、慣れないうちは金具がうまく外れなかったり、外れた金具がどこかへ飛んでいったりします。新しいバンドを取り付けようとしても、なかなか穴の位置が合わず、少々イライラすることもあります。
しかし、何度かやっているうちに、だんだん要領が分かってきます。
必要な工具も、大げさなものではありません。「バネ棒外し」と呼ばれる、小さなドライバーのような工具が一本あれば十分です。ネットで時計のバンドを購入すると、おまけとして工具を付けてくれるショップも多いので、最初はそういう店で購入するとよいと思います。
自分でバンドを交換できるようになると、時計の楽しみ方は一気に広がります。
同じ時計でも、黒い革バンドを茶色に替えるだけで、ずいぶん印象が変わります。革を金属製のバンドやナイロンベルトに替えれば、まるで別の時計のように見えることもあります。季節に合わせて交換できるのも便利です。
革のバンドは、夏の暑い時期に汗をかくと、どうしても傷みやすくなります。汗が染み込んで色が変わったり、表面がひび割れたりすることもあります。自分で交換できれば、夏だけナイロンや金属のバンドに替えたり、傷んだ革バンドをすぐに新しいものに取り替えたりできます。


掲載している写真は、最近バンドを交換した二本の時計です。
一本はオリス。今では廃盤になってしまった、往年の人気モデルです。長く使ってきた時計ですが、バンドを替えると、また新鮮な気持ちで身につけることができます。
もう一本は、SEIKOの逆輸入モデルのクロノグラフです。価格は、なんと一万八千円。
この価格でありながら、時計としての存在感は十分にあります。カジュアルな服装にも合わせやすく、バンドを替えれば、さらにさまざまな着こなしに使えます。
時計というと、高価であればあるほどよいものだと考える人もいるかもしれません。しかし、いくら高級な時計を身につけていても、その日の服装や靴とまったく合っていなければ、時計だけが浮いて見えます。場合によっては、単に高いものを身につけていることを見せたいだけの、成金趣味のように見えてしまうことさえあります。
私は、時計の価格やブランドだけで価値を判断するよりも、服装に合っているかどうかのほうが大切だと思っています。
高価な時計を一本持つ楽しみもありますが、手頃な時計をいくつか持ち、その日の服装や気分に合わせて選ぶのも、時計の楽しみ方のひとつです。
今日は黒い靴だから黒い革バンド。今日は少しカジュアルだからクロノグラフ。ネイビーの靴に合わせて、時計のバンドもネイビーに替えてみる。そんなふうに考えながら時計を選ぶ時間も、ファッションの楽しみの一部です。
時計は、ただ時間を知るためだけの道具ではありません。
服や靴、ベルトと同じように、その日の自分をつくる小さなパーツです。高級かどうかにとらわれず、自分の服装や暮らしに合った時計を選び、ときにはバンドを交換しながら、これからも気軽に楽しんでいきたいと思っています。



