2022.10.10

2023年以降のデザインビジネスについて

koizumi design factory

デザインビジネスに変革の必要性

コロナ以前からデザインビジネスに大きな変化が来ています。
従来デザインという仕事は受注が基本でした
つまり、クライアントに需要が生まれて初めて仕事が発生し、それを取り合うという図式です。
この図式はデザインという仕事が現れてからずっと続いていましたし、私たちデザイナーもそれに対して何の違和感も持たず流れに乗ってきました。
俗に言う、需要と供給のバランスがとれていた時代はその図式でも何ら問題はありませんでした。
ましてやデザインビジネスの創成期には、需要が供給を上回っていたのも事実でデザイナーが先生とよばれ、もてはやされることもしばしばでした。
そしてその状況の中でデザイナーのジャンルが産まれ、専門性が高まっていきました。

しばらくすると、需要と供給のバランスがとれデザイナーという仕事自体が一般的になり、各企業内にもデザイナという部署が一般的になってきました。ただ、そのころはまだアナログの時代でしたから、誰でも簡単にデザイナーを名乗れるような状況に無く、それなりの教育と経験で一定の技術を磨いていないとデザイナーとして認めてもらえませんでしたから、デザイナーの供給自体が需要とバランスがとれていたのですが、約30年前から徐々に起こり出したデジタル化がこの状況を大きく変えることとなりました。

それまでデザイナーを名乗っていなかった人や十分な経験と技術が無いにもかかわらずデザイナーを名乗る人たちが激増し、その後世の中に出現したインターネットの普及でさらにそれが顕著になりました。
一時はWEBデザイナーの需要が一気に増えたので、そのジャンルでは需要と供給のバランスが働きましたが、現在ではその状況も過ぎ、すべてのデザイン界で供給が過多になっています。

それが価格破壊を生み、サブスクやコンペの乱立、納期の短縮などのサービス過剰によってデザイナーの立場をどんどん弱くしています。
それにはデジタル化だけで無く、専門学校や大学などデザイン教育機関の増加や様々な原因がありますが、何よりも問題なのはデザイン界自体が半世紀以上の間、構造が全く変わっていないことに原因があると思います。口を開けて待っていることが唯一の受注方法であり続けたことこそが問題なのです。

デザインは2大領域から3大領域へ

話は少し変わりますが、デザインのビジネスには従来大きく2つの領域がありました。

1つは「売り物自体をデザインする」ということです。例えば、ファッションデザイナーやプロダクトデザイナー、インテリアデザイナー、テキスタイルデザイナー、ジュエリーデザイナー、建築デザイナーなどがそうです。

そしてもう1つは「売り物が売れるようにデザインする」ということです。グラフィックデザイナーやWEBデザイナー、ディスプレイデザイナーなどがそうです。

デザイナーという仕事を語るとき、この違いはあまり論じられることが無いのですが、この2つの違いはもの凄く大きく、時としてお互いが反発することすら普通にあるのです。お互いが自分のデザインの力でものが売れたと過信するとこの傾向はさらに強まり、独りよがりなデザインに走ってしまうこともしばしばです。

しかし、インターネットの普及によりネット上での販売が普通になったことで、この図式が大きく変わろうとしています。そもそも、ものが売れるか売れないかはデザインの善し悪しだけで決まるものではありません

ものが売れるかどうかで最も大きな力は、ものの「売り方」です。製品自体のデザインや広告のデザインがいくら良くても「売り方」を間違えると、ものは売れません。
もちろんインターネットの普及以前からこのことは重要でしたが、ここまでネット販売をはじめとする「小売り」業態が変化してくると、この「売り方」という領域にもデザインの力が必要とされ始めています。

つまり、デザインの領域は
●「売り物」自体のデザイン
●「打ち物を売るため」のデザイン
●「売り方」のデザイン
この3つに拡大したといえます。

多くのデザイナーがこの3つ目の「売り方」のデザインという意味がわかっていないかもしれません。ただ、このことに早くから気づき、取り組んでいくことで「自分たちで仕事を創り出す」ことが可能になります。
自分たちで仕事を創り出せば、価格競争やサービス過剰とは決別することができるだけで無く、何よりも楽しくデザインという仕事ができます。これからの時代は、この「楽しく仕事ができる」というのが最も重要であり、最も求められることであるはずです。

テレワークや脱都会での勤務など形から変革しても、精神的に解放されるとは限りません。テレワークや脱都会での勤務にもそれなりの問題点は山のようにあるはずですし、働く場所が変わるだけで様々な問題が解決すれば、そんなに楽なことはありません。それよりも今のデザイナーには「楽しく仕事ができる」というもの凄く基本的なことの方がずっと大切だと思います。

それには、2023年以降の大きな変化に向けてこの3つの領域を常に意識し、実際のビジネスに反映させられるかどうかが分かれ目です。「売り方」のデザインとは何か、そのことを各デザイナーが真剣に考えるべき時代がすでにやってきています。きっとそこにはアナログからデジタルへ変化したときと同じくらいの大きなインパクトがあるはずです。

時代の大きな波に乗れたかどうかは、乗ってみないとわかりませんし、乗ろうとしないと乗れるはずがありません。アナログからデジタルへ変化した時代に、取り残されて消滅したデザイナーやデザイン会社があれほどたくさんあったことを今のデザイナーやデザイン会社は知らないかもしれませんが、それは紛れもない事実であり、デザイン界としての大きな教訓でもあるはずですから、この波を侮ってはいけないのです。

この考え方が正しいかどうか、同意するかどうかはもちろん各デザイナーの判断ですが、私たちコイズミデザインファクトリーはこのことに向け、スタッフ全員が全力で取り組む覚悟で様々な準備をしています。

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