2017.6.27

地球を肴にもう1杯

最近では「山崎」や「白州」などの人気銘柄の陰に隠れて半ば忘れられた感のある80年代の銘酒「サントリー・リザーブ」。まだウイスキーにも1級、特級などという等級があったころ、サントリーの特級では下から「角瓶」「オールド」「リザーブ」の順であったように思う。
当時まだ会社員デザイナーだった私は、仕事の憂さを晴らすのに夜毎木屋町あたりにふらふらと出かけては飲んで、唄ってという生活を送っていた。もちろんそれほど金があるわけもなく、なけなしの少ない小遣いはほとんど飲み代に消えていた。

90年代になるまでは今のようにBARもたくさん存在していなかったので、飲んで、唄えて、お姉さんと仲良くなれる店と言えばもっぱら「スナック」だった。そこではボトルキープという制度がお約束であったので、その店のおきまりウイスキーをキープするのだが、だいたいは「オールド」または「リザーブ」ということが多い。その店の出入りがサントリーではなく、ニッカの場合はそれが「ブラックニッカ」か「スーパーニッカ」になるのだ。
その違いもよくわからずにウイスキーではなく、ブランデーを入れることもあった。祇園あたりの上等な店では会社の偉いさんたちが「ヘネシー」を当たり前のようにキープしていた時代だった。もちろん金のない私たち若僧は「サントリー・VSOP」がせきのやまだ。
昔の自慢話だが、これでもカラオケを唄わせると若いころから少々ブイブイ言わす私は、それを武器にいつまでたってもボトルの酒が減らない店というのを確保する術を得ていた。

https://youtu.be/kjNzWkES3-M

話はそれたが、その頃の「リザーブ」のCMで名優・緒形拳がカウンターで地球に見立てた丸い氷で飲んでいるシーンがあった。そのCMが人気だったこともあってその頃から巷のBARでは丸く削った氷でロックを飲ませるというのが広まった。
私が30年以上つきあいのあるバーテンダーはいまだに氷を1つずつ手作業で削るというやっかいなことを続けているが、その面倒な慣例は緒形拳のせいだという。

そんなバーテンダーの愚痴も聞きつつ、こちらの愚痴も聞いてもらいつつ、今夜もまた地球を肴に酒を飲む。
今は私も少しは大人になって、「リザーブ」から「山崎」に昇格したけれど、口をつく愚痴の中身はいっこうに成長していない。

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