2019.10.3

初めての絵の具

ギターペイント ハイペイント12c
ギターペイント ハイペイント12c

この写真は、私が生まれて初めて母親に買ってもらった絵の具のパッケージです。もちろんこの画像はその当時私が所有していたものとは別のものですが、大阪の「ギターペイント」という絵の具メーカーの広報担当者がご厚意で社内にあった資料画像をくださいました。

「ギターペイント」というと、50歳前後の関西人ならほとんどの方が一度は図工の時間などで使った経験があると思います。1970年前後はテレビCMも盛んに流れていましたし、この歌に聞き覚えのある方も多いことでしょう。

私は子供の頃から絵を描くのが大好きでした。幼稚園の時、絵の具で描いた競馬の絵を先生に褒めてもらったのが、最初に自分の絵を褒めてもらった記憶です。
私の家は子供の頃、かなり貧乏でしたから、他の家のようにいろいろなおもちゃがあるわけでもなく、妹と二人で親が仕事から帰るまで留守番をしているのはとても退屈でした。

いつの間にかそういう時間に絵ばかり描くようになっていた私は、幼稚園児の頃すでに自分でも絵を描くのが好きで得意だという自覚を持っていたように思います。

その頃市営住宅の同じ階に住んでいた1つ年上の従兄弟が小学校に入学し、全員が買わされる絵の具のセットを見せてくれました。それがものすごくうらやましく、滅多におもちゃなど親にせがんだことのない私は、ダメ元で絵の具が欲しいと親に訴えました。

私の母親は幼い頃から恵まれない家に育ったこともあり、本当は行きたかった美術学校にも行けず、中学を卒業後就職をしていましたが、自分の好きな絵を描くということを少しでも叶えたかったのか、近所の工房でろうけつ染めをしたり、当時景気のよかった友禅工場でスクリーンプリント工をしたりして家計を助けていました。

自分の家が貧乏なことは幼稚園児の私でも十分に認識できていましたので、自分でも思い切ったせがみ方をしたものだと思いますが、そのとき私の母親は困った顔ひとつせず、近くの文房具店でギターペイントの12色セットを買ってくれました。パレットはセットに付属していた薄い樹脂製のチープなものでしたが、それでも十分うれしかった記憶があります。筆は父親と母親がつとめていた染工場でもらった日本画用のもの、筆洗はリリーの空き缶に針金を通して。今の時代では考えられないチープなものでしたが、それでも十分私はうれしかったものです。いまでもその文房具店(三条春日下ルの上達文具店ですが現在は営業されていません)のどのあたりにその絵の具が置いてあったかまで、はっきりと覚えているほどです。

上達文具店
上達文具店

そのときの記憶が今でも鮮明に残っているせいか、私は今でも画材店や文房具店に入るのが好きです。特に画材店の棚いっぱいに様々な絵の具が並んでいる様子は、私を高揚させてくれます。そのせいもあってか会社案内に掲載する写真も絵の具のチューブやカラーインクの瓶、巻紙つきのパステルなどを並べてみたり、事務所の棚にはあまり使わない画材が大事にとって合ったりします。

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今でも仕事で絵の具や墨で絵を描きますが、あの時の喜びは私の中で確実にいきづいているように思います。

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