2024.3.29

AIがデザイナーに突きつけるものは

筆

最近のAIやChatGPTの進化はすさまじい。恐らくデザインの仕事を何年か後には一変させるだろう。
チラシやDM等はまず最初にAIでもデザインができるようになりるだろうし、ライターに頼っている文字原稿もAIの得意とするところだ。イラストなどはすでにかなり影響が出だしているし、動画の世界は絶好のターゲットとなっている。

デジタル化は世の中に大きな恩恵がある事は間違いないし、今後の少子高齢化の解決方法としても有効である事は理解できる。ただ、その反面現状の職業分布が大きく塗り替えられることも間違いないので、失業や転職が目立つのは避けられない。

それも時代の変化ではあるし、失業や転職を迫られた人が、人手不足と言われている飲食業や介護関係などに補充されると考えれば、合理的かもしれない。当事者にとってはかなり深刻な問題ではあるが、その当事者にならないために切磋琢磨すれば、雇用している企業的にも悪い話ではない。

ここまでは一般業種の話だが、私たちデザイナーやカメラマン、イラストレーターといった職業はどうだろう。

ほんの数年前までは、世の中がデジタル化されてもそれは所詮道具が便利になっただけのことであって、創造性の高いいわゆるクリエイティブな業種には関係ないと思われていた。銀行員や会計士、税理士、事務職などの計算業務が最も先に淘汰される分野で、次に電車やバスの運転手、工場の組み立て工などが続くと思われた。

ところがここ数年で状況は一変している。

イラストやデザイン、コピーライティングの世界でも一気にAIが浸透し、今ではデザイナーの必修ツールであるADOBEのアプリケーションにまで標準でAIの生成ツールが組み込まれている。

すでに将棋やチェスの世界では人間がAIに勝つことは不可能な時代になっているし、ネットショップのお問い合わせチャットなどでも普通にAIが活用されている。

では、写真やイラスト、デザインの世界でAIが浸透してからも生き残るにはどうすればいいのだろう。

まずテクニックに頼るようなものはAIに勝てない。デジタルな処理がスーパーリアルなものまで瞬時に生成してしまうからだ。
作業工程が多いものほどその傾向は強いはずなので、画面一杯に食品と価格がびっしり並ぶスーパーのチラシのようなものは、AIの方が断然早い。写真に関してはデジタルになってからも「現像」という作業がカメラマンの仕事となっているが、それこそはAIに任せればほぼ問題無いだろう。

いずれにしても作業の手数の多いものほどAIの方が有利になるのは想像できるが、「ここだけは」といえる部分があるようにも思う。

それは「タイミング」や「偶然」を生かした制作物と、出力に特殊性があるものではないかと思う。

例えば写真の場合、「ここぞ」というシャッターを切るタイミングであったり、イラストの場合筆と紙の擦れで生み出される偶然のタッチ等がそうであろう。また、出力の特殊性というのは、3Dを含めたプリンターでは生成できないようなもの、例えば陶芸や漆芸の作品であったり、手芸や料理といったものづくりに関わる部分ではないか。
もちろん何年か先にそういうものもAIが取って代わるようなことが可能になるかもしれないが、それを市場が欲したり、実現するために巨額の投資をする意味があるのかどうかという点に行き着く。

そこには恐らく分かる人にだけ分かるような「趣」や「雰囲気」というものが存在して、それを人々が欲している以上AIの入り込む隙はないのでは無いだろうか。

つまり近い将来、クリエイティブな職業は、本来のクリエイティブさを担保していなければ存在できない状況になって、誰でも彼でも人脈や運だけでは残れないようになっているのだろうし、今よりも「作業」と「創造」の2極化が進むのは間違いないことなのだろう。

奇しくもAIがクリエイティブ職の本質をくっきりと浮かび上がらせることとなり、当事者である私たちにどちらへ進むかの選択を突きつけるのではないだろうか。
そしてこれは遠い将来の話では無く、ここ2,3年の間にやってくる大きな転換期の話なのだ。

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筆で描いた龍
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