2026.11.2

ページをめくる、思いがけない発見を楽しむ

コイズミデザインファクトリーの書籍

KDFでは、創業当初から書籍の大切さを意識し、デザインに関わる本を積極的に集めてきました。仕事に必要な資料をそろえるという意味もありますが、本を通じて知らなかった世界に触れ、自分たちの発想や知識を広げたいという思いがあったからです。

10年ほど前までは、デザイン関連の書籍を専門に扱う業者の方が、事務所まで本を持って訪ねてきてくれました。気になる本を手に取り、ページをめくり、気に入ればその場で選ぶ。そんな買い方が、私たちにとっては身近なものでした。
そういった業者が扱っているのは、一般の書店で見かける本ばかりではありません。海外の特定の業界に向けたトレンド情報誌や、専門性の高い雑誌などもありました。自分ではなかなか探し当てられない、そうした情報との接点をつくってくれる、ありがたい存在でした。
しかし、書籍発行数の減少やネット販売の一般化とともに、そうした業者の方が訪ねてくることもなくなりました。それに伴い、海外の専門的な情報誌などは、以前よりも入手しづらくなったと感じます。本を買う機会と一緒に、知らなかった本を紹介してもらえる機会がなくなったことは残念な気がします。

コイズミデザインファクトリー資料室

一方、一般の書店で扱うデザイン関連の書籍は、Amazonなどで簡単に購入できるようになりました。欲しい本が決まっていれば、これほど便利なことはありません。ただ、書店の棚を眺めていて、思いがけず面白そうな一冊を見つけたときの高揚感は、私にとって特別なものです。だから今でも、出張の際には、なるべく書店をのぞくようにしています。

最近は、企画書や提案資料をつくるときも、ネットから資料を集めることが多くなりました。AIの登場によって、その傾向はさらに強まっています。必要な情報に短時間でたどり着けることは、日々の仕事を進めるうえで大きな助けになります。
ただ、検索しているのを振り返ると、どうしても「今、欲しいと思っているもの」を探している気がしています。検索する言葉も、AIに投げかける質問も、自分の頭の中から出てくるものです。そのためか、集まった資料を見ていると、自分が想像していた範囲に収まっているなあと感じることがよくあります。便利に探せるからこそ、自分の発想の外側に目を向けることが大事だと思うのですが・・・。

それに比べ、本を開くときには、少し違う楽しさがあります。次のページに何が載っているか、めくるまではわからない。デザインやレイアウト、写真や色、文字の組み方、知らなかった素材や考え方に、ふと目が止まる。探していたものとは別のところで、「ん?」と感じる瞬間があります。
もちろんその発見が、すぐに目の前の仕事に結びつくとは限りません。それでも、記憶に引っかかったものが、後になって別の企画とつながることもあるでしょう。目的を決めずに眺める時間や、気になるページで少し立ち止まる時間にも、発想知識を育てる意味があると私は思っています。

KDFのスタッフや、毎年受け入れているインターン生にも、こうした偶然の発見を大切にしてほしいと話しています。必要な情報を集める力とともに、まだ知らないものに興味を持ち、面白さに気づく感覚も、デザインの仕事では大切にしたいからです。

これからもKDFでは、書籍を通じて視野を広げる機会を大事にしていきたいと思います。そして何より、私自身が、ページをめくった先で思いがけないものに出会い、気持ちが高揚する、あの感覚を持ち続けていたい。まだ見たことのない一冊との出会いを、これからも楽しみにしています。

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