2021.2.13

ものづくりは効率だけで考えてはいけない

ウールベスト織ネーム
ウールベスト織ネーム

これはスコットランド製のウールベストについている襟ネーム。
わたしはもともと織ネーム会社のデザイナーだったので、こういう物には今でも目がいってしまう。
最近のブランドは織ネームにこれほどこった物をつけることは滅多に無い。コストや納期が障害になるからだ。

ちょっと驚いたというか、感心させられたのは、この織ネームの裏側を見ると洗濯表示や品質表示までもが織り込んである。

50年くらい前のブランドでは時々見かけられるが、最近のブランドではかなり珍しい。この製品はスコットランド製なのだが、日本製ではなかなか見かけないし、中国製ともなるとほぼあり得ない。

ものづくりの効率という点では、このような洗濯表示はプリントのネームであることがほとんどだし、中には生地に直接プリントしてある物まで見かける。

しかし、たったこの1枚の織ネームがついているだけで、このブランドのものづくりに対するスピリットが伝わってくる気がする。ありきたりのプリントネームとチープな襟ネームがついていたなら、このベストの価値はもっともっと下がっていただろう。

昨今のものづくりはしばしば効率優先で考えられてしまうが、たった1枚の織ネームまで自分たちの思いを入れ込むことでその製品が一気に輝き出す。
コストや納期ありきのものづくりになれてしまった現在のメーカーは、その思いを入れ込むという作業をおざなりにし、ユーザーに伝えようとしない。

もちろん安くて品質の高い製品は素晴らしいが、それよりもわたしは、作り手のスピリットがじんじんと伝わってくる物の方がしっくりくるし、大事に扱いたいと思う。
ものづくりのスピリットが持ち主に伝わるから、そのものの持ち主はそれを大事に使おうとするじゃないのかなあ・・・・と、思う。

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