2026.1.18

お気に入りのBARがありますか?

お気に入りのBAR

私はそれほど酒が強いわけではありません。
酒の種類にもよるのですが、日本酒やワインはあまり得意ではありません。
もちろん1杯目のビールは、この上なくうまいと感じますが、2杯、3杯と飲み進めるタイプでもありません。
食事をしながら飲むのであれば、ビールや酎ハイでも十分なのですが、じっくりと落ち着いて飲みたいときはウイスキーを選びます。なかでもバーボンが好きです。日本のウイスキーが世界的に高い評価を受けていますが、私はスコッチやジャパニーズウイスキーよりも、バーボンのほうが性に合っています。

私が酒の味を覚えた約40年前には、今ほどBARがたくさんあったわけではありません。20代前半の頃は、友人とは居酒屋、会社の先輩や同僚とはスナック、というのが世間的にも当たり前の時代でした。
ところが、その頃から世の中はいわゆるバブル期に突入します。ファッションや文化も一気に華やかになり、若者の遊び方も大きく変化しました。
プールバー(ビリヤード場)やディスコは人で溢れ、酒を飲む場所も多様化し、どんどんお洒落になっていきました。
映画「COTTON CLUB」や「カクテル」でのリチャード・ギアやトム・クルーズの格好良さに憧れ、若者向けのBARでカクテルやバーボンを飲むようになったのです。
カクテルやバーボンの名前をたくさん知っていることが自慢だったり、自宅にカクテルシェーカーを置いたり、ロックでバーボンを飲むためにロックグラスを揃えたりと、酒の味もよく分からない若造が流行に乗って、格好をつけて飲んでいたものでした。
私のバーボン好きはその頃からですが、当時は今よりも高価で、上等なものはなかなか手が出る価格ではありませんでした。それでも無理をして、BARの棚に並ぶボトルを端から順番に試していったものです。

最近では、気に入っている銘柄もある程度決まってきましたが、何よりうれしいのは、昔に比べて圧倒的に価格が下がったことです。
当時は高くてなかなか飲めなかったものが、今ではそれほど頑張らなくても、気楽に飲めるようになりました。
大手スーパーや酒のディスカウントショップに行けば、ボトルで千円台というものも珍しくなく、4、5千円も出せば、かなりうまいバーボンが手に入ります。当然、BARで飲むときにも、昔より気軽に注文できるようになりました。
ただ、酒というのは、少しでも安く、たくさん飲めればいいというものではないということも、年齢とともに分かってきます。特に、私のようにあまり酒が強くない者にとっては、なおさらです。
そして、年齢とともに酒を飲む場面が変わってくるのも、不思議なものです。友人とわいわいやるのも楽しいのですが、うまい酒を飲むときは、ひとりが一番いいと思うようになってきました。
そのためには、居心地のいいBARが必要になってくるので、店選びがとても重要になります。

私がBARを選ぶ基準は二つあります。
一つ目は「店に対する興味」。そしてもう一つが「心地よさ」です。
店に対する興味というのは、内装であったり、店の歴史であったり、シチュエーションであったりします。最近のBARは特に内装に凝っているところが多く、以前のようなクラシックなしつらえ一辺倒ではない面白さがあります。
一方で、老舗ホテルのBARには老舗なりの素敵な雰囲気がありますし、路地裏にひっそりとあるクラシカルなBARも、やはりいいものです。
とはいえ、そういった店は総じて、2、3杯も飲めば席を立たなければならないような空気があり、あまり居心地がいいとは言えません。店の雰囲気を一通り楽しんだら、さっと席を立つのが大人の飲み方なのでしょう。

居心地のいいBARというのは、不思議なものです。何時間いても退屈しませんし、いつもよりたくさん飲んでも、あまり酔わないような気がします。延々と飲み続けられるような錯覚すら覚えます。
私がいちばん居心地がいいと感じている祇園のBARは、空いている時間に行くと、私の好みに合ったBGMを選んでくれます。
多くのBARではJAZZなどのお洒落な音楽が流れていますが、その店では、BARにはあまり似つかわしくない70年代や80年代のフォークソングを次々にかけてくれるのです。
マスターも同世代なので、そうした曲を聴きながら昔の話をしていると、2時間や3時間はあっという間に過ぎ、3杯目、4杯目のグラスもいつの間にか空いてしまいます。
新しく仕入れたCDを自慢げにかけてくれることもしばしばで、そのたびに音楽談義に花が咲きます。

その店のオープン時期と、私が独立した時期が近いこともあり、マスターとは、自分の城を維持していくことのしんどさや喜びを、どこか共有できている気がします。そうしたところも、居心地のよさにつながっているのかもしれません。
不思議なことに、BARというのは、通い始めると月に2度、3度と足を運ぶのですが、出張が続いたり、仕事が立て込んだりすると、2ヶ月、3ヶ月とご無沙汰になることも珍しくありません。
それでも久しぶりにその店を訪れると、5杯、6杯と深酒をしてしまい、5時間も6時間も居座った末、眠気が襲ってくる夜中の2時や3時になって、ようやく店を出るのです。
そしていつものように、壱銭洋食の営業時間が終わってしまったことを後悔しながら、学習できない私はタクシーに乗ります。
ああ、それにしても、朝飯に壱銭洋食、食べたかったなあ……。

小泉の雑記帳

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