2021.6.11

本を買うということ

コイズミデザインファクトリー資料室

最近、本を買っていますか?
様々なメディアで出版業界が不振だということがいわれて久しい。これだけインターネットが普及すれば致し方の無いことかもしれない。しかも、このコロナ騒ぎの中、余計に書店へ足を運ぶ人が減ったのも、その流れを加速させている。

私は、小説という物をほとんど読まない。これは若い間からずっとだ。マンガすらあまり読まない。私の世代なら誰もが通る週刊のマンガ雑誌もほとんど買ったことが無い。

ところが様々なジャンルの入門書やムック本の類いは大好きで、何か一つ趣味を持つと、徹底的にそういう類いの本を読みあさる。カメラ、釣り、アクアリウム、ギター、革製品の手入れ本など、自宅の本棚や事務所の資料の中にはそのての本が今でもたくさん残っている。

トレンド情報誌
KDFの資料
KDFの資料

最近ではこういう種類の本はインターネットの検索性能に押されていっこうに売れないらしい。私は仕事柄インターネットを頻繁に使うので、余計に買う必要がなくなってきた。
ただ、やはり本で無いとダメなこともたくさんあって、今でも事務所の資料は増え続けている。
インターネットの資料は限りなく裾野が広く、大概のことは何かしら資料が見つかるのだが、ここというピンポイントの深さがたりない。
例えば、来年春夏のトレンドカラーは?検索しても発行されているトレンドカラー情報誌ほどの深い情報は得られない。有料のサイトに登録でもすればもうっと深い情報が得られるが、本を買うよりももっと高額であったりする。また、70年前のテキスタイルデザインを調べたいと思っても、断片的な情報しか出てこない。

つまりそういう深い情報はまだまだ本に勝てないことが多い。

本とインターネットは物を調べる上で決定的に違うところがある。
インターネットでは自分が必要とする情報をめがけて探すことに強い。「検索」という機能だ。キーワードを駆使すればどんどん情報が出てくるが、大体どれも深さがたりない。
対して本は、ペラペラとめくっているうちに期待もしていなかった情報が飛び込んでくるようなことに楽しさがある。そしてさらにここという情報が見つかったときには、かなり深いところまで情報を得られることがある。
もちろんどちらも片方では不十分なので、それぞれのいいとこ取りをするのがいい。
しかし、本は高いし、インターネットもどんどん複雑になり、デバイスや通信料に料金がかかる。
特に、デザインの資料本やトレンド情報誌は驚くほど高い。

そう、情報を得るということはお金がかかるのだ。特に本はお金がかかるのだ。

だから、私のようにもともとお金を残すということに執着しない者が、本を買いあさるということは正直自殺行為に近い。「私の財産といえば本くらいのものです」などと冗談を言っているが、本当のところ、そこそこ現実に近い。

とはいうものの、やはりずらっとお気に入りの本が並んだ本棚を眺めるのは気持ちのいいものなので、今月もまた、本が増えてゆく。

TOP
contact