ネクタイが好き
トラッド育ちには必修アイテム
私はネクタイが好きです。シルクや麻、ウールなど素材によってさまざまな表情を見せる結び目が、メンズファッションの一番のポイントになると思っています。
私たち50代後半の世代は70年代の日本におけるIVYブームの中で少年時代を過ごし、ファッションに目ざめるきっかけをこの頃つかみます。「VAN」に代表されるIVYブランドのボタンダウンシャツをデニムに合わせるということをものすごく新鮮に感じたものでした。
そして私たちよりも大人の世代でおしゃれな人たちは、その延長線上のトラッドファッションを纏い、ウイングチップの重厚な革靴で決めるという姿が、MENS CLUBの教えでした。
さらに20代前半には「紺ブレ」ブームが起こり、チノパンとの組み合わせでコインローファーを履くという姿が一つの定番でした。そういう世代にはシルクのレジメンタルストライプやペイズリー、ドットなど超定番のネクタイが必修アイテムでしたが、当時駆け出しの社員デザイナーで安月給だった私にはシルクのネクタイなどそんなに簡単に買えるものでは無く、先輩社員の締めているクレストのタイがうらやましかったものです。
そういう反動からか、自分でそこそこ服が買えるようになってからは、IVYやトラッド系のブランドを買いあさり、ワードローブはすぐにその手の服と靴で一杯になりました。
世間ではクールビズなどノーネクタイが浸透
最近は会社員や銀行マン、政治家までもノータイが珍しくなくなっています。
日本の夏は、欧米に比べて蒸し暑く、ネクタイを締めるのはつらいということからエアコンの節電の意味もあって、「クールビズ」などという愚策が浸透しました。
私も暑がりなので、確かに真夏はつらいのもわかりますが、最近では季節を問わずノータイが浸透しているのが、どうも抵抗があって面白くありません。
特に通勤スーツにノータイで第一ボタンを開けるというスタイルが、なんとなく間抜けに見えて仕方がありません。とくにワイシャツの襟がだらしなく開いているのは最悪です。
テレビのニュースなどで、政治家がそういう格好をしていると、本当にがっかりしてしまいます。
メンズファッションではいろいろなデザインを楽しめる唯一のアイテム
メンズのスーツは基本的に無地が多く、柄物でもチェックやストライプに限られます。
そこに無地のシャツを合わせるだけだと、全く面白みのない格好になってしまい、何の個性もセンスも感じられません。もちろん無地の組み合わせだけで成立しているブランドも多々ありますが、私には何の興味もわかないので、ネクタイのデザインというのはとても重要です。そこにネクタイに合わせたチーフがあればもっといいのですが、会社員の場合、どうしてもやり過ぎ感を嫌う会社の風潮があったりしますので、難しいのかもしれませんが、せめてネクタイくらいもっと楽しめばいいのになと、常々思っています。
さまざまなデザインを楽しめる
ネクタイのデザインには、ストライプやドットなどのシンプルなものだけで無く、クレストやペーズリーなどの柄物、鴨や犬、馬、スポーツモチーフなどトラッドなモチーフがちりばめられたものなど様々な物があります。
ネクタイを変えるだけで、スーツすたいるに変化も付けられますし、ベストやカーディガンと組み合わせることで、さらに幅が広がります。
さらに、トラッドなデザインのものであれば、スーツだけで無く、パーカーやジャケットなどとも組み合わせて楽しむことも出来ます。
そうすると仕事着としてのスーツだけで無く、休みの日のお出かけやデートにもひと味違ったスタイルで決めることが出来ます。
ちゃんと結んで、ちゃんと緩めよう
日本の会社員でスーツを着ている人の99%はネクタイの締め方が下手くそです。本当に下手くそです。
朝の通勤時間帯に電車に乗ると、沢山の会社員がスーツを着て乗っていますが、若者から定年前のベテランまでほとんどが下手くそです。
いくら上質なスーツにサラのワイシャツを着ても、ネクタイの質が悪かったり、ちゃんと結べてなかったりすると、それだけでなんとなく決まらないものです。
最も多いのは結び方が緩すぎる事です。なんとなくボワッと膨らんだ結び目で、しかも襟にちゃんと締め付けてないのをものすごく多く見かけます。
さらに、シャツの第一ボタンまで外していて、襟元全体にだらしなくなってしまっている人まで見かけます。
ネクタイの結び方など、それほど難しいものではありませんし、靴のひもが結べるなら同じ程度の難しさだと思うのですが、そもそもきちんと結ぼうという意識自体が欠如しているのでしょう。
確かにネクタイにはシャツの襟のデザインによって、いくつか結び方がありますが、日本のビジネスマンが着ているシャツであれば、シングルノット(プレーンノット)一つ覚えていればほとんどの場合OKなはずです。ワイドの襟を好んで着る方もいますが、それでもダブルノットを覚えればいいだけのことですから、全くハードルは高くありません。
シングルノットでしっかり「きゅっ」と結んだところにディンプルを入れるだけのことです。
それだけで周りよりセンスよく見えるのですから。
また、仕事中にちょっとリラックスするために緩めるときも大事です。
ボタンを外してネクタイを緩める姿は、いかにも仕事が出来そうで格好のいいものですが、そのときのゆるめ方が間違っていると、ただだらしなく見えるだけです。
ネクタイを緩めるというのは、結び目を緩めるのではありません。正しい緩め方は首に巻いているループの部分を緩めるのです。きちんと結んだ状態であれば、その結び目を維持したままループだけを緩めることが出来るはずです。第一ボタンを外してきゅっと締められたネクタイが緩められている姿は、不思議とだらしなく見えないものです。
そうやって緩めたネクタイは、再びボタンを留めて締めてやれば、すぐに元通りになりますので、よけいに便利です。
ネクタイくらい自分で選ぼう
百貨店のネクタイ売り場で恋人や奥さんにネクタイを選んでもらっている男性を見かけます。男性が一人の場合は、店員に相談したりしている光景もよく見かけます。
ネクタイのデザインの善し悪しなど、基本的に好みの問題ですから、もっと積極的に自分で選んでみましょう。色の組み合わせや柄の相性など、ごく普通に考えればそれほど外すことも無いはずです。
それでも会社でみんなにセンスが悪いとか似合ってないとかいわれる時には、本屋へ行ってメンズファッション雑誌をパラパラとみればお手本はいくらでもあります。
若い世代で、自分の普段着はちゃんと選んでいるのに、ネクタイは選べないという人がいます。それはきっとスーツ姿に興味が無いからです。でも考えてみて下さい。スーツは一週間に5日も着るのですよ。その格好に興味が無いというのは頂けません。スーツ姿があなたのユニフォームであり、戦闘服なのですから。
もっとネクタイを楽しもう
いろいろ書いてきましたが、基本的にはネクタイもファッションアイテムの一つなのですから、スニーカーや帽子を選ぶように、もっと楽しんで選べばいいと思うのですが、現状日本の男性諸氏の間ではなかなか難しいようですね。
私はそろそろ冬物のネクタイをしまって、春夏のネクタイに衣替えをしようと思います。