2017.8.10

筆は表現の先端出口

私は絵描きでも書道家でもないし、イラストレーターでもない。タダのデザイナーではあるけれど、少々筆にはうるさい。
特に上等を使うというのではないけれど、私なりの描きやすさというのがある。
一般的には筆先のまとまりのいいのがいいとされているが、それとともに私は筆の腰を気にする。いくらまとまりがよくても腰がないと絵や字がフニャフニャなものになってしまう。

筆は水の含みによって用途が変わる。もちろん太さにもよるが、この水の含みがものすごく描き味に影響する。さらさらと書きたいとき、ぽたぽたと塗りたいとき、筆の選択を誤ると絵にならない。
大げさに言えば、私が思ったことや考えたことをはき出す出口の先端であるし、その結果が映し出される紙との唯一の接点でもあるのだ。

もう一つ大事なことは「筆と長いつきあいをする」こと。これが一番大事かもしれない。
筆は使えば使うほど自分の描き方や握り具合に合ってくる。そうなるともう離せない。

だから筆の後片付けにも私なりのこだわりのようなものがある。
アクリル用の筆以外は獣毛であるので、やはりきちんと洗ってやらないと傷みが早くなる。よく筆を洗うときは石鹸を使ってはいけないという人がいるが、私はそうは思わない。昔の石鹸ならいざ知らず、最近の石鹸は手荒れもしないような品質の高いものなので、筆の毛が痛むようなことはない。それよりも絵の具や墨が残らないようにしっかりと洗う方が大事だ。

私のデザイン事務所には創業当初から使っている筆が何本かあるが、それらは私が今まで描いてきた絵や字にずっとつきあってくれたということになる。
そろそろ30年だからちょっと凄い。今までに何枚描いたのかさっぱりわからないが、間違いなくどの絵や文字にも関わってきた奴らだ。
そんなふうに思うと写真にでも撮って、ブログに書いてやろうかという気になった。

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