法人として30期目を迎えて
全法人のたった0.021%
7月1日からコイズミデザインファクトリーは法人化して30期目に入りました。
なんでも30年続く法人は、全法人のたったの0.021%らしく、その極々少数に入れていることは大変喜ばしい事ですが、さらに35期、40期と続けていけるようまだまだ精進が必要だな、という思いを改めて強く感じています。
29期は最も大きく動いた1年
29期は弊社にとって、これまでで最も大きく動いた1年だったのではないかと思います。
この1年間で大きな2つの新しい取り組みがありました。
●東京オフィス開設
ここ2、3年急に気持ちが東京に傾いた気がしています。やはりデザインビジネスは地方と東京で大きな隔たりがあるのは事実で、媒体の量、クライアントの量ともに京都や他の地域とは大きく違います。ただ、だからといって東京のデザイン界のレベルが地方に比べ決して高いわけではないと思い続けてきたこともあり、昨年思い切って東京オフィスを開設しました。何年か前の東京オリンピックエンブレム問題が私の中で大きな契機となり、自分自身のデザイナー人生を京都で終わらせたくないという気持ちと、周りの様々な条件が私を一気に後押しした気がしています。今は恵比寿の小さな部屋ですが、今期中にはもう少し広い場所を確保し、東京でもデザイナーを採用したいと思っています。もともとどうなるかわからない不安定な状況でスタートしましたので、最もミニマムな方法を取ったのですが、1年が経ち、どうにかやっていけそうな思いを強くしましたので、今期さらに思い切ってみようと思います。ただ、世の中は現在コロナウィルスの影響で経済が停滞していますので、こんな時期に動いて本当に大丈夫なのかという不安もありますが、逆にテナントの空きも増加し、デザイナーの人材も取りやすくなるのは弊社にとって追い風ではないかと思っています。
●新しいビジネスモデルの確立
29期は後半コロナウィルスの影響で売り上げが思ったほど伸びませんでしたが、それでも30期に向けて大きく前進したことがあります。今までとは全く違う形態のビジネスモデルを構築できたことです。これまでもクライアントの業績に直接左右されないように様々な取り組みをしてきたつもりですが、29期はその完成形とも言える方法が実現しました。
それはクライアントの売り上げに対する歩合によってデザインフィーを決定する方法です。この方法は、弊社が「商品企画から販売までのデザインを一括して請負う」という理想形を叶えた結果であり、これこそが本質的なWIN/WINを叶えられる理想の方法ではないかと思っています。弊社が商品企画や販促、ECサイトの運営、卸への対策などをデザインという切り口で総合的にサポートする事でクライアントの売り上げをアップさせ、それが弊社の売り上げにも繋がるといいうデザイン会社のビジネスとしては画期的な方法ではないかと思っています。
さらにもう1つ、今まではあまり取り組んでこなかった契約という形を東京でスタートさせました。従来、契約というのはどちらか一方が必ず損をするという考え方を私自身が持っていたため、あまり積極的にそういう形を取らなかったのですが、今回は思い切ってある大手繊維商社の企画やプレゼン業務を全面的にサポートさせていただく契約を結びました。従来なら損得から計算を立てていたビジネス形態ですが、今回いただいたお話は、やはり大手商社でないと関わることが出来ないような案件が多いことと、その案件から弊社のビジネスチャンスも大きく広がるように考えたので、思い切って取り組んでみることにしました。今回のコロナ騒ぎで結果はまだまだ判断できにくい状況ですが、また一つ新しいフィールドに踏み込めた気がしています。
30期の展望
今期はまだまだコロナウィルスの影響が経済全体に及んでいますので、大きな飛躍を望んでも他の業種も含めなかなか厳しいものがあるように思います。幸い弊社はクライアントの業種が多岐にわたっている事と、広告など代理店経由の仕事がほとんどないことから、比較的他のデザイン会社よりも影響が少ないのではないかと思っています。
そういう状況の中でもぜひ進めたい事が3つあります。
●東京オフィスの拡張
前述のようになんとか上手く滑り出せた東京オフィスを今期はぜひ拡大したいと思っています。私の57歳という年齢を考えますと、そんなに時間的余裕はありません。おそらく今回のコロナウィルス騒ぎでテナントが開いてくるのでは無いか、家賃が安くなるのでは無いか、という憶測と、京都と比べて東京の家賃は確かに高いのだけれど、そこまで思ったほどでは無いなという判断もあって、一気に拡大をもくろんでいます。ただ、問題は人員です。ただでさえ経験者不足の業界にあって、この時期そこそこの経験者はなるべくリスクを避け、今いる会社にしがみつこうとする傾向があるので、なかなか確保するのが難しい気がしています。来春の新卒まで待ってられないので、まずは経験者を探すしかないのですが、そこが今回の計画の中で最も苦労しそうな気がしています。
●自社商品の販売拡大
現状でもgarafactory.comで自社のテキスタイルデザインデータを収録したDVDを発売していますが、まだまだ片手間的な力のいれ具合になってしまっています。今期はまずここを充実させることと、さらにデータ集としてDVDを販売するのでは無く、柄を1点づつ販売するサイトを立ち上げようと思います。このサイトではテキスタイルデザインだけで無く、Tシャツやカットソーなどのプリントデザインも1点づつ販売するつもりです。過去には年間500点以上のTシャツデザインをこなした実績もありますが、最近ではアパレルがほとんど関西から東京へ移転してしまったこともあり、以前のようにたくさんの受注がとれていません。せっかく東京へ事務所を出したのですからここを責めない手はないので、一気に販促もかけながらそのサイトを立ち上げようと思います。最近InstagramやfacebookでKDFのApparel Graphicというページを立ち上げたのもそのためです。
さらに今期はかねてからの夢であった弊社のイラストを使用したキャラクタービジネスに挑戦しようと思います。手前味噌ですが、弊社には他の事務所を圧倒するイラストのアドバンテージがあるのでそれをもっと前面に出し、ライセンス契約の模索や、自社販売商品の開発などを企んでいます。もちろんそこでもWEBの戦略は欠かせないので、現状のWEBサイトに関連付けた展開を進めたいと思います。
●自社メディアの構築
自社製品の開発や東京事務所の販促にはWEBを中心とした販売戦略が必要ですが、デジタルの方法論だけに頼らず、アナログの世界観も絡めた方法が必要だと思っています。そのためにずっと延び延びになっていた紙媒体の自社メディアを構築し、そこへWEBの拡散力をプラスできればいいかなと思っています。その手始めとして会社設立30周年の記念本(本当は創立30周年の時に出すはずでしたが、延び延びになっていました)を今期こそは発刊し、できればそれをたとえ半年に1度でもいいので定期的なものとして確立させたいと思っています。そしてそれら全体の世界観がコイズミデザインファクトリーのブランディングに繋がればなあと思っています。
以上の3つが今期是非とも実現したいことですが、どれもそうそう簡単にできることではありませんし、もちろん通常の売り上げを作っていく仕事の量も増やしていかなければなりませんのでなおさらです。私自身もうそれほど若くはありませんので、体力勝負という仕事の仕方は諦め、今期はもっともっと今まで以上に頭を使った仕事の仕方をしなくてはなりません。どちらかというと私は若い頃から自分自身がデザインをしたいという欲求が強すぎることもあり、人を育て、任せていくということが苦手です。そういう性質のせいもあり、30年以上もやっていてまだこの程度のことしかできていません。もちろん逆をいえばそういう仕事の仕方できたからこそ0.021%の会社に残れたということもあります。ただ、これからはそればかりでは大きな発展が望めない規模になってしまったということと、私自身の残り時間の意識がどんどん少なくなっていくという感覚が、懸命に自分自身にムチを打っています。
大きな期待感とそれと同じくらい大きな不安感を背負い、今期コイズミデザインファクトリーはかつて無いほどの挑戦をしていきます。それは経験したことのない茨の道かもしれませんし、雲の上を歩くような清々しい歓喜の道かもしれません。いずれにしても私自身の踏ん張りとスタッフの協力、そして皆さんのご指導ご鞭撻が必要であることは間違いありません。
何卒一つコイズミデザインファクトリーに、皆様のお力を貸してください。不安を精一杯隠した背中を後押ししてください。
30期、ようやくここまで来ました。
35期、40期をどんな形で迎えられるかは、この1年に大きくかかっていると思っています。